26 ページ26
.
予定の時間より少し早めにホールに入ると既に人で溢れかえっていた。これは前の方には行けないな、と早々に諦めて後ろの空いているスペースで開演を待つ。
「あれ？Aじゃん。」
突然声をかけられ顔を上げる。
「あ、ユンギさん。ダンス見に来たんですか？」
ユンギさんって、あんまりダンス好きそうには見えないけど。ホソクたちと仲が良いから見に来たのかな？
「まぁ、それもあるけど。今日のダンスの曲、俺とナムジュンで作った曲だから、どんなもんか聞きに来た。」
「え！すごい！本当に音楽作ってるんですね！」
「まぁな。ちゃんと聞いとけよ。」
ホールの全体の照明が暗くなって、音楽が鳴り出した。練習の時とは違って、音が大きくて体に響く。ステージがライトアップすると途端に歓声が響く。ほとんどが黄色い声で、どれだけ人気なの！？ってびっくりした。
私の目は、やっぱり1番にホソクを見つけて。ホソクしか追えない。曲のビートにピッタリ合わせた動き、繊細な指、しなやかに揺れる体。
やっぱりすごい。
練習の時とは比にならないくらい、すごい。
ホソクの一つ一つの動きを見て、たくさん練習したんだって分かる。ダンスが大好きなんだって分かる。私は、最後の最後まで声も出せずにただただ見入る事しか出来なかった。
3曲目が終わると、ステージの全員が横一列に並んで礼をして。もう終わっちゃうのかって名残惜しくなった。ホソクはステージ上から観客に向かって頭の上でハート作ってて。ハート飛ばすの私にだけじゃなかったのかってちょっとモヤっとした。
「、、、ユンギさん、音楽めっちゃ格好良かったです！音源欲しいです！」
「高ぇぞ。」
「出世払いでお願いします！」
ステージの興奮が収まらない私は、無駄にユンギさんに絡む。だって本当にすごかったから、この感情を誰かと共有したい。
「あ、そういやお前も今日の打ち上げ来るんだろ？」
「打ち上げ？なんのですか？特に誘われてないですし、今日バイトです。」
「そうなの？まぁいいや。バイト終わったら来れば？」
「？？？」
「じゃあな〜。後で誰かに連絡させるわ。」
え？なに？決定なの？
勝手にユンギさんとちょっと仲良くなった気がしてたけど、なに考えてるかちっとも分からない。掴みどころがないと言うか、言葉が足りないと言うか。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 87人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：umbrella | 作成日時：2024年3月5日 18時
