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その曲を聞いてまた付箋の事を考え始める。
バッグの中からカードケースを取り出して、中に入ってる二つ折りにした付箋を眺める。
かける?かけない?
いや、かけるにしてもタイミング的に今じゃないし…
「待ってたんですけど」
俯いていた私の頭上に低い声が落ちて来た。
反射的に勢いよく頭を上げてそこにいたのは、黒いキャップにマスク姿の
「ユン…」
"ギ"までは言わなかった。
咄嗟に右手で口を抑える事ができて。
ギリギリのファインプレーにユンギの目元が少し笑って見えた気がした。
右手から解放された私の口が"何してるんですか"なんて聞く前にユンギが
「電話一本くらいすぐかけろって」
と、私の額を人差し指で軽く押して、頭がグラッと後ろに揺れた。
「しかもそれ持ってるのにかけないって、どういう事?」
私の手に持ってる付箋の事を"それ"と言ったと、ユンギの目線でしっかりと分かった。
いや、私から言わせて貰えればこんな人がごった返してる場所でユンギに偶然会うなんて思ってなかったし。
という、謎の言い訳が頭の中を支配したけれど
「…まさか本当に電話していいものとは思わなかったんです」
別の謎の言い訳が出て来て、案の定ユンギからは'何言ってんだ'と氷のように冷たい言葉が返ってきた。
私も同じ事思いました、と胸中で返事をした。
ガヤガヤと静かではないこの場所。
ユンギの白い手が私の目の前に差し出される。
「、何ですか?」
「Aの携帯貸して」
何故?と思ったが、キャップの鍔の影にあるユンギの目は冗談っぽくなくて何も聞かずおずおずと携帯をその手に乗せる。
そしたら無言で頷いたユンギの手が躊躇なく私の携帯を操作し始めて、一分も経たないうちに'返す'と。
本当に返ってきた。
「もういつまで経ってもかけて来そうにないから、今、俺が俺に電話した」
"俺が"の時に私の携帯を指差して"俺に"の時にデニムの左のポケットを指差して、非常に分かりやすい説明だった。
いや、そんな事を言ってる場合じゃない。
つまり、私の番号がユンギの手によってユンギの携帯の履歴に残った、という事。
自分の携帯の履歴を確認すると、一番上に登録していない番号に発信している項目がちゃんと残っていた。
ファンはユンギと連絡先交換しちゃ駄目なんじゃないかな…?
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かむ(プロフ) - サマンサさん» 彼には平然と煽ってもらいたくてこうなりました😂 (3月27日 19時) (レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)
サマンサ(プロフ) - 煽り上手なユンギ痺れます...! (3月27日 17時) (レス) @page43 id: 950212af01 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - 苺あめさん» こちらこそ目を通して頂きありがとうございますㅜㅜ少しのんびり更新ですがにはなってますが是非最後までお付き合いいただけたら嬉しいです! (3月26日 12時) (レス) id: e587d3099d (このIDを非表示/違反報告)
苺あめ(プロフ) - かむさん、ユンギのお話をありがとうございます。ユンギと隣の彼女の関係が出会ってから急激に近くなって、でも元カノも出てきたりして、この先の展開が楽しみで仕方ありません。毎回、更新を楽しみにしています。これからも頑張って下さい。 (3月26日 10時) (レス) @page36 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - にゃんさん» わーありがとうございます🥹そしてユンギペンさま…ご期待に添えられるかわかりませんが、良ければ最後までお付き合い頂けたら嬉しいです🥹 (3月21日 9時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月20日 20時