19 ページ19
「多分、Aが会ったの、彼女」
散々笑った後で月を見ながらその場で腰を下ろしたユンギの発言にフッと心臓が驚いた。
すぐに'元ね'と付け足されたけど、そういう意味じゃなくて。
深刻そうな女の人の挙動と、ユンギのやけに曇った表情の原因はやっぱりそういう事だったんだ、と。
妙な納得感。
「何が入ってるか見た?」
見るわけない。
首だけを横に振る。
「俺の物。向こうの家に置いておきっぱなしにしてたやつ、よくまぁご丁寧に」
いくつか入っているのだろう。
紙袋の中をゴソゴソと片手が何度も動いている。
つまり、別れた後だけれども自宅にあった元彼ユンギの忘れ形見をノーアポイントで返しに来た、と。
私の中でそう解釈した。
むしろ、それ以外の解釈は無理そうだ。
それからもう一つ分かった事。
これは私の推測でしかないけれど。
「こんな服、持ってたのも忘れてた」
小さく黒い英字のワンポイントの白いTシャツを懐かしそうに広げたユンギ。
多分まだ、あの人の事が好きなんだ。
曇った表情と置き去りにしていた過去の物を何処か遠くを見る様に眺める目。
暫く恋愛ご無沙汰の私でも分かる、なんとなく。
もしかしたらSeesawの歌詞はあの人の_____
「それで、Aは?」
白いTシャツをいつの間に袋に戻したのか。
座ったままのユンギが私を見上げている。
「何がですか?」
「何がって、ファンになった?」
'ファン?'と首を傾げる。
ユンギが目を細めてるのは月明かりが眩しいからなのか。
'うん'と頷いたユンギがいよいよ立ち上がると、今度は目を細めていない。
やっぱり、私越しに見上げてた月が眩しかったのね、なんて納得している場合じゃなかったのだ。
「俺の歌あんな音量で聞くくらい、俺のファンになったんじゃないのって」
ユンギの左側の口角だけが上がって、それと同じ方向に首を傾げてそんな事を。
そんな、急にアイドルみたいな事を。
しっかりと交わった目線の先のユンギは月明かりの下でも肌が透き通るように白くて。
ユンギの言う通り、ファンになったのかもしれない、と感じた。
だってそんな強気な事言われても、悪い気なんて一つもない自分がいたから。
551人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かむ(プロフ) - サマンサさん» 彼には平然と煽ってもらいたくてこうなりました😂 (3月27日 19時) (レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)
サマンサ(プロフ) - 煽り上手なユンギ痺れます...! (3月27日 17時) (レス) @page43 id: 950212af01 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - 苺あめさん» こちらこそ目を通して頂きありがとうございますㅜㅜ少しのんびり更新ですがにはなってますが是非最後までお付き合いいただけたら嬉しいです! (3月26日 12時) (レス) id: e587d3099d (このIDを非表示/違反報告)
苺あめ(プロフ) - かむさん、ユンギのお話をありがとうございます。ユンギと隣の彼女の関係が出会ってから急激に近くなって、でも元カノも出てきたりして、この先の展開が楽しみで仕方ありません。毎回、更新を楽しみにしています。これからも頑張って下さい。 (3月26日 10時) (レス) @page36 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - にゃんさん» わーありがとうございます🥹そしてユンギペンさま…ご期待に添えられるかわかりませんが、良ければ最後までお付き合い頂けたら嬉しいです🥹 (3月21日 9時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かむ | 作成日時:2024年3月20日 20時