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『‥ずっとユンギの傍に置いてほしいって思ってるよ。』
「‥それは、今の関係じゃ満足できない‥って事か。」
『えっ！？い…いや、そういう事じゃなくて‥』
「はは、冗談だよ。」
急にけらけらと笑われ、Aは途端に顔が赤くなるのを感じる。この景色の中では、この頬の赤さがより目立ってしまいそうだと俯いた。そうして地面に落ちた小さな黄色い花弁を見ていると、しばらくして名を呼ばれた。真綿を手のひらで包むような柔らかい呼びかけが、心臓を揺らす。やはり怖い。今まで一人で積み重ねてきた想いの行方が彼のこの先の言葉で決まると考えると、手が震え、手を置く膝も震えた。結局覚悟なんて出来ないままAは顔を上げ、ゆっくりとその視線を横に座る彼へと向ける。
「昔言ったの覚えてない？俺は、Aが嫌だって言っても一生離すつもりないって。」
『‥‥は』
「‥いや、つまり。‥そういうこと。俺も、Aが好きだ、もうずっと前から。」
目線を揺らして彼はそう続けた。Aは口を情けなく半開きにしたまま、その表情をじっと見つめる。珍しくいつもの余裕そうな笑みは無く、少し難しそうに眉を曲げ、手持ち無沙汰に垂れた髪を耳へかき上げた。頭で目まぐるしく彼の言葉を整理しながら、Aはその解釈が間違いではないかと何度も繰り返す。その言葉に少しでも同情があるのではと疑うが、それではこの彼の紅く染まった耳への説明がつかない。
半開きだった口をAははっとして閉じ、結局何の言葉も返せないまま小さくひとつ頷いた。
「アイスでも食うか。」
今までは夢だったと言われれば信じてしまいそうなほど、ユンギはいつもの調子で言う。嬉しそうな様子で立ち上がり、ごそごそ財布を出す様子をAは混乱したまま眺めていた。食べないの？好きだろ、と近くにある店を指差しながらAに聞く。
『あ、ううん、食べる‥』
「すぐそこだから買ってくる。」
Aは尚もぼうっとしたまま、遠くなるユンギの背中を見つめていた。暫くして戻ってきたユンギはまだ震えるAの手にアイスを差し出す。何が起きたのか、まだAにははっきりと理解が出来ていない。思っても居なかった道が今急に目の前に現れ、Aはそこへ転がり込んだような気分だ。
黄色い向日葵の花弁がひとつぽとりソフトクリームの上に落ちていることにも気づかずに、Aは一口頬張る。ほんのりと感じるバニラの甘味が、やけに懐かしかった。
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作者名：mitsu | 作成日時：2021年9月26日 14時
