Pseudo romance#9

#438 ページ39

そういえば(人1)が俺の機嫌取りに、


『グゥみたいなキスシーンとかないと思うよ。そもそも脚本を書いてくれた方が私とテヒョンと縁のある人で。私達の関係性とかしっかりと踏まえてくれてる』




昨夜こんな事を、皮肉混じりに言ってきた。だから俺は「ふーん、それで？」と(人1)に疑いの目を向けてしまう。まるで俺の不安が疑心暗鬼だと。そもそも、そんな無駄な事やめなよ、と言われてる気がしたから。





その脚本家との信頼が何処まで深いのか、俺は知らないけれど。(人1)の言う通り、関係性を考慮してくれてるのであれば、何故恋人同士の役にはめたのか。




二人の親しい間柄だとすれば、その脚本家は裏で二人を繋げようとしている。俺にはそうしか思えなかった。





考えすぎだよ、と勿論励ましてくれるメンバー達の前では極力、気にしてない素振りを見せるが、ふと楽屋のテレビに映ったドラマの新CMをメンバー皆食い入るように眺めては重い沈黙に包まれて。


ただ、直後ふと漏れたジミン氏の何気ない一言が。


俺から平常心を奪った。





「…テヒョンはメンタル強くなったよね」



「え？ジミニから見てテヒョンはそう見えてるの？」



「うん。だって、あれほど(人1)ちゃんの時は死んだ顔して相手役の俳優を訳もなくディスり続けてたのに。ジョングガと大好きな彼女の初キスシーンがあったらしいんだけど冷静だったんだよ｣



「テヒョンも成長したんじゃないの？(人1)ちゃんは世界を股に掛ける大物女優さんだし。免疫付いたんだって」




「それならそれでいいけど、(人1)ちゃんと別れる前は未だ束縛する自分を攻めていたんだ。女優の彼氏でいる為には、結婚するしかないとまで言っていたのに、」




「どーしたんだよ、ジミン。何が言いたいの？」




「……だから、その。本気でテヒョンは、彼女のこと好きなのかな？って」




口篭るかのように、親友の違和感を吐露したジミン氏は。俺の表情を咄嗟に見て、「でもテヒョンは変わったからね！気の所為だよ」と、空気をわざと明るくした。

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