Pseudo romance#9

#423 ページ24

(人1)を守る為にあの社長が、そこまでしたか。


(人1)にとっては、とても喜ばしいことなんだろうが俺にとっては逆効果にすぎない。



(人1)自身がどんなシーンも挑戦するということ、周りの制御もなくできるということは。絶対にないと思っていたヒョンとのラブシーンが現実に起こりうるということだ。



だからと言ってまた俺が仕事のことに口をだすと嫌な顔するし。それで最近大喧嘩して未だ仲たがいしている。撮影なんてしてる場合じゃなくなるほど不安は膨れ上がるばかりで。彼氏の立場ってこんなに弱いのかと思い知らされた。





「本番行きます」






「…、はぁ」






スタッフのヨイショか、髪型やメイクを施し(人1)に似ていると褒められては鼻高々になって。そこまで、こんな新人に気を遣う必要あるのか？これも(人1)が関わる故の圧力なのか？




俺も演じるにあたって支障をきたしそうだが集中して目を瞑ればふわっと香る。とても馴染みのある(人1)の匂い。



偶然でも、まるで本物の(人1)を抱きしめているかのような気分にさせてくれたお陰で、難なくキスは乗り越えた。







でもやっぱり無償に(人1)が恋しくなる。(人1)が欲しくなる。






・







「え、うそ！マジで！？」




「…うん！(人1)さんの収録現場、急遽変更になったらしい。同じスタジオに居るなんてラッキーじゃない！？後で覗いてみようよ」




帰り際、スタッフの騒ぎ声に俺の足は見事に停止した。ここに(人1)がいるということに驚いただけじゃない、嬉しさと不安と気まづさ。一気に駆け巡るマイナス思考に会いたいよりも会えないが勝っていく。





それでも一応、確認の為マネージャーに、テヒョンヒョンが居るの？って何気なく聞いてみれば何の警戒もなくスタジオまで案内してくれた。






あれから人が変わったように、ヒョンがメンバーと彼女の話をするようになって。メンバー皆気付いてるかもしれないけど、何処か不自然さがある。



話の合間に、あえて仲は良好だと真剣に主張している言い回し。その割には無表情で感情を失っているかと思えば空元気だったり。




俺らのように揉めたんだろうか、特に彼女はあんなにも(人1)をライバル視してた上にネット上ではデマにしても復縁を噂されて、いい気はしないはずだから。

#424→←#422

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す